不具合事例とQ&A

  • 施工

    外壁タイル洗浄剤によるシーリング材の雨筋汚れ

    外壁タイルのシーリング材表面に、黄色~褐色の雨筋状の汚れが発生したり雨水流下部が白色化する現象です。


    汚染状況Ⅰ

    汚染状況Ⅱ

    タイル施工後、アルカリ性の「モルタルあく」を中和・除去するために使用する洗浄剤(塩酸)が原因となります。この強酸性洗浄剤は無色透明ですが、シーリング材の艶の消失や白色化を引き起こします。更に、この洗浄剤はモルタルのあく成分と反応し、黄色に変化し、流れ落ちると黄色〜褐色の雨筋状の汚れを呈するようになります。

    事前対策

    次工程の「タイル洗浄施工業者」に次の内容で指導を行って下さい。
    ①洗浄剤使用後、外壁ばかりでなく目地部分も十分に水洗を行う。
    ②洗浄剤の水希釈率は約10倍(3〜5%溶液)を基本とする。濃塩酸(35%)の使用は厳禁として下さい。

    事後対策

    黄色の雨筋汚れはシーリング材の表面だけに現れるものです。これは、イソプロピルアルコール(IPA)やメチルシクロヘキサン(MCH)等の有機溶剤を含んだウエス等で比較的簡単に除去できます。また、クレンザーなど研磨剤入りの洗剤でも表面の変色は除去できます。

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  • 施工

    押出成形セメント板でのシーリング材の膨れ

    押出成形セメント板のシーリング目地に、施工後数日でシーリング材表面に半球状の膨れが発生した事例です。


    膨れ状況

    押出成形セメント板はパネル断面の大きな穴あきを特徴としています。パネル自体の厚さが薄く、目地深さによってはパネル断面の穴をシーリング材やバックアップ材で塞いでしまう場合があり、シーリング材施工後に日射による気温の上昇などでパネル温度が変化すると、内部の空気が膨張し、未硬化状態のシーリング材を押し上げて膨らますことがあります。

    パネル断面 パネル断面

    事前対策

    必す膨れるというわけではありませんが、次のような予防策があります。
    ①日射を避けて施工する。(方位・足場ネットなど)
    ②一枚おきに施工する。
    ③影響を受ける前に硬化させる。(硬化促進剤の使用)
    ④雨天後のパネル内部の残留水を十分乾燥させる。
    ⑤パネル断面の穴を先打ちシーリング材で塞ぐ。
     

    膨れる原因が空気の膨張のため、次の傾向を示します。
     * 湿気が多い ⇒ 水分の蒸発 ⇒ 空気の膨張増大
     * 温度変化が激しい ⇒ 気温上昇時、空気の膨張増大

    事後対策

    膨れが発生した場合はシーリング材を撒去し、事前対策に準じて再施工して下さい。

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  • 施工

    色ムラ・撹拌不良の発生(ハンドミキサー使用)

    次のような現象が発生しました。
    ・シーリング材の表面で色ムラが発生。
    ・撹拌不良の発生。
    ・石目地に、部分的に発生したひどい濡れ色汚染。
    ・アバタや膨れの発生。


    ハンドミキサーの使用状況

    ハンドミキサーを使用したことが原因です。ハンドミキサーは作業者の感覚で撹拌するため、色ムラ・撹拌不良・アバタなどが発生しやすくなります。ハンドミキサーによる混合作業は作業者の技量に大きく左右されるため日本建築学会のJASS 8「防水工事」では認められていません。
     

    〈ハンドミキサーの問題点〉
    ・目視では均一状態であっても、適正な分散が得られない場合があります。
    ・缶底のシーリング材の撹拌が、十分ではない場合があります。
    ・高速回転のためエアーを巻き込み、細かいアバタが発生しやすくなります。

    事前対策

    ・撹拌は専用の回転式混合機(ドラム回転式)で行って下さい。
    ・撹拌時間は、15分として下さい。材料メーカーとしては、ハンドミキサーの使用は認めていません。

    回転式混合機 専用混合機での撹拌状況

    事後対策

    ハンドミキサーによる撹拌は認めておりませんので、ハンドミキサーでの撹拌材料は使用しないで下さい。

    ※ハンドミキサーを使用してをて不具合が発生した場合は、保証致しかねる場合がありますので注意が必要です。

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  • 施工

    2成分形ポリウレタン系の硬化不良(混合不良)

    PU9000typeNB (2成分形ポリウレタン系)が部分的に硬化不良を起こした事例です。


    PU9000typeNBの硬化不良の状況

    ・基剤と硬化剤の撹拌が不十分なため、均ーに硬化が進まない部分が発生しているものと考えられます。
    ※2成分形ポリウレタン系シーリング材は、変成シリコーン系などに比べると、撹拌を十分に行わないと硬化不良が発生しやすい性質があります。

    事前対策

    ・基剤はアルミパウチ容器から完全に絞り出して使用して下さい。
    ・撹拌機のパドルが6L用であることを確認して下さい。また、混合性にれた6L用改良パドル〔ミキスタ工業(株)及び日本ソセー工業(株)製の改良6L山型パドル(ウレタン用)〕を使用して下さい。
    ・缶の装着不良、パドルの差込み不足またはフープアタッチメントの摩耗による空回り(回転数の低下)が撹拌不良の原因となる場合があるので、装着不良がないか十分に確認して下さい。
    ・撹拌時間は必ず15分間に設定してください。
    ・混合途中でパドルを左右に動かし(振る)、途中でパドル軸に付着したシーリング材をかすり落としてください。
    ・日射により材料温度が高くなると混合が不十分になりやすくなるため、使用前のシーリング材は冷暗所に保管して下さい。

    事後対策

    ・硬化不良部分を撤去し、部分的に打ち替えて下さい。

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  • 施工

    充填不足によるはく離(材料の充填・押し圧の不足)

    PCaパネルのシーリング目地で、接着している面と接着していない面が明確に分かれていた事例です。


    ゴンドラ作業で接着・ はく離が分かれた例

    1)充填不足
     ・シーリング材を目地に充填後、ヘラ仕上げを行った場合に目地底まで材料が行き渡らないと、被着体の接着面に材料が十分に接触せず、はく離が起こりやすくなります。
     ・ヘラ仕上げを簡便にするため、ガンでシーリング材を目地に充填する際、仕上げた状態を狙って充填すると、充填不足が起こりやすくなります。

    2)押し圧不足
     ・金属ヘラ、仕上げバッカーなどで仕上げる場合、十分な押し圧をかけないで綺麗に仕上げることのみを中心に作業を行うと、接着面に材料が十分に接触しない状態を起こしやすくなります。
     ・充填不足及び押し圧不足は、接着面を十分に確保することができず、はく離事故を起こす可能性が高くなります。


    充填不足の場合

    押し圧不足の場合

    事前対策

    1)充填
     ・図のように目地底にも材料が十分に行き届くよう、ガンに反発力が感じられるまで確実に充填して下さい。目地の表層に置くように打つ「置き打ち」は、目地底に空隙ができるので適切な施工方法ではありません。

    2)押し圧
     ・接着に大きく影響するため、十分に押し圧を感じながら仕上げ作業を行って下さい。
     ・仕上げ後、再度仕上げバッカー等で押さえるのも有効です。


    十分な充填と押し圧の例

    事後対策

    ・はく離した場合シーリング材を打ち替えて下さい。再度施工する場合は、シーリング材を撤去後、清掃等を十分に行ってから施工して下さい。


    充填作業の例(確実充填)

    押さえ作業の例(十分な押し圧)
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